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在宅の褥瘡ケアで訪問看護師が見るところ|体位交換とマットレス、ご家族にお願いする3つ

ご家族に「エアマットを入れたのに、なんで悪くなるんですか」と聞かれたことがあります。 そのとき、うまく説明できませんでした。 マットレスを入れれば防げる、と私自身がどこかで思っていたからだと思います。 在宅の褥瘡(じょくそう=床ずれ)は、道具だけでは止まりません。 止めるのは、毎日の生活のほうです。 今回は、訪問看護として褥瘡をどう見るか、そしてご家族に何をお願いするかを整理します。 できる場所は、だいたい決まっている 骨が出っぱっていて、体重がかかるところ。ここに集中します。 姿勢 できやすいところ あお向け 仙骨(おしりの中央)、かかと、後頭部、肩甲骨 横向き 大転子(腰の横の出っぱり)、くるぶし、耳 座位 坐骨、尾骨。車いす時間が長い方は特に 在宅で見落とされやすいのは かかと です。 掛け布団の下に隠れていて、おむつ交換の流れでは目に入りません。 訪問のたびに、意識して見る ようにしていました。 「赤くなっている」を、その場で見分ける 赤みを見つけたら、指で軽く押してみます。 押すと白くなり、離すと赤に戻る …一時的な圧迫の可能性。まだ戻せる段階 押しても色が変わらない …すでに組織が傷んでいるサイン。ここからは早い この違いを、その場でご家族にも見てもらうと伝わります。 「ここ、押しても白くなりませんよね」と一緒に見る。言葉で説明するより、ずっと早いです。 体位交換は「2時間ごと」と言い切らない 教科書では2時間ごとと習います。 ただ、在宅で介護をされているご家族に、夜中も2時間ごとにと言えるでしょうか。 私は、そこは正直に相談していました。 体圧分散マットレスが入っているなら、 間隔を延ばせる場合がある (主治医・福祉用具と相談) 完全に真横にしなくていい。 30度くらいの傾き を、クッションで作れば圧は逃げる 夜は無理をせず、 寝る前と、朝いちばんを確実に できない回数を約束させると、続きません。 続く形に落とすほうが、結果的に守れます。 マットレスは「入れて終わり」ではない エアマットを入れたのに悪くなる。冒頭のご家族の疑問には、いくつか理由があります。 設定体重が合っていない …軽い方に硬い設定のまま、が意外と多い 沈み込みすぎている …...
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訪問看護から主治医に報告するタイミングと伝え方|「電話していい」の3段階と、30秒で伝わる型

「これ、先生に電話したほうがいいのかな」 訪問先の玄関を出たところで、そう迷って立ち止まったことが何度もあります。 結局その日は電話せず、夜になって気になって眠れませんでした。 訪問看護でいちばん神経を使うのは、処置そのものではないと思っています。 主治医に「いつ、何を、どう伝えるか」 のほうが、ずっと難しい。 病院なら廊下で捕まえて聞けたことが、在宅では電話一本の判断になります。 今回は、報告していい基準と、短く伝わる言い方を整理します。 迷う理由は「忙しい先生に悪い」だけではない 報告をためらう理由を分けると、だいたい3つでした。 この程度で連絡していいのか分からない 何をどう言えば伝わるか自信がない 前に電話したとき、そっけない反応だった 3つ目が、いちばん尾を引きます。 ただ、あとから振り返ると、そっけなかったのは 結論が最後まで出てこない伝え方 だったから、ということが多かったです。伝え方が変わると、反応も変わりました。 「すぐ連絡する」の線引き 迷ったら連絡、が大前提です。そのうえで、置いておくと楽になる線を書きます。 場面 目安 その場で電話 意識・呼吸・循環の変化、いつもと明らかに違う痛み、出血、転倒して打ちどころが不明、指示された範囲を超える処置が必要 その日のうちに連絡 発熱が続く、食事量・水分量が数日落ちている、褥瘡が広がってきた、内服が飲めていない 次の報告書でよい 経過が安定している、ご本人の希望や生活面の変化、ご家族の負担の様子 この3段に振り分けるだけで、玄関先で立ち止まる時間はかなり減りました。 迷う一件は、たいてい 真ん中の段 にあります。真ん中は、その日のうちにファクスや連絡ノートで文字にして送る。それで十分なことが多いです。 30秒で伝わる型 電話の最初の一言を決めておくと、頭が真っ白になりません。 名乗りと相手の確認 …「○○訪問看護ステーションの△△です。□□さんの件でご報告です」 結論を先に …「発熱が3日続いていて、受診の判断をお願いしたいです」 いま見えていること …体温、食事量、いつからか。数字を入れる 背景をひとこと …前回訪問時との違い、内服の状況 こちらの見立てと依頼 …「誤嚥性のものを疑っています。往診か受診指示をい...

訪問看護の看取り|時期ごとにご家族へ伝えることと、看護師が抱え込まないための仕組み

訪問看護でいちばん重い場面が 看取り です。医療的な手技よりも、 ご家族に何を、いつ伝えるか で結果が変わります。 この記事では、 時期ごとに家族へ伝えること と、 看護師自身が抱え込まないための仕組み をまとめます。 まず前提:家で看取ると決めた後も、迷い続けます 「家で最期まで」と決めたご家族でも、状態が変わるたびに揺れます。 その揺れは失敗ではありません。 訪問看護師の役割は、決断を守らせることではなく、 いつでも選び直せる状態を保つこと です。 「気持ちが変わってもいい」と最初に伝えておく 救急車を呼ぶ選択肢を否定しない 入院に切り替えた場合の道筋も、あらかじめ主治医と共有しておく 3つ目が実務上いちばん大事です。 「もう無理」となった夜に、はじめて考え始めるのでは間に合いません。 時期ごとに伝えること 時期 伝えること まだ話せる時期 これから起こる変化の全体像。 「食べられなくなるのは自然な経過」 だということ 食事量が落ちてきたとき 点滴で楽になるとは限らない こと。無理に食べさせなくてよいこと 眠っている時間が増えたとき 意識が遠のくのは苦しさとは違うこと。 耳は最後まで聞こえていると言われる こと 呼吸が変わってきたとき 下顎呼吸や喘鳴が起こり得ること。 本人が苦しんでいるとは限らない こと 亡くなられた直後 あわてて救急車を呼ばなくてよい こと。誰に連絡するか 最後の行を必ず先に伝えてください。 「息をしていない」と気づいた瞬間に119番してしまい、在宅での看取りが警察対応になってしまう——これは事前の説明で防げます。 「そのときどうするか」を紙に残す 口頭で説明しても、その場面では思い出せません。 1枚の紙 にして、目につくところに貼っておいてください。 いつもと違うと思ったら、まず訪問看護ステーションへ電話 (番号を大きく) 呼吸が止まったように見えても、あわてなくて大丈夫 連絡する順番 (訪問看護 → 主治医 → 親族) 夜間・休日の連絡先 かかりつけ医の名前と連絡先 1番の電話番号を大きく書いてください。 動揺している人は、小さい字を読めません。 やってはいけないこと 残された時間を断定する … 「あと1週間です」とは言わない。 幅で伝える 「もう何もできません...

訪問看護の感染対策|持ち込まない・持ち出さないための手順と、ご家族への伝え方

訪問看護の感染対策は、病院とはまったく別のものです。 手洗い場が使えるとは限らず、物品を置く清潔な場所もありません。 そして訪問看護には、病院にはないリスクがあります。 看護師が家から家へ持ち運んでしまう ことです。この記事では、 持ち込まない・持ち出さない を軸に、実際の手順をまとめます。 基本の考え方 病院 訪問看護 環境 整備されている その家ごとに違う 手洗い いつでもできる 使えないことがある 物品 院内で完結 持ち込み・持ち出しがある リスク 院内感染 家から家への持ち運び 判断 その場に他の人がいる 1人で決める いちばん大きい違いは最後の行です。 迷ったときに相談できません。だからこそ、 事前に手順を決めておく ことが対策そのものになります。 標準予防策(スタンダードプリコーション) 出発点はここです。 感染症の有無にかかわらず、すべての利用者さんに対して同じ対応をとる という考え方です。 血液、体液、分泌物(汗を除く)、排泄物、傷のある皮膚、粘膜——これらは 感染の可能性があるものとして扱います。 「この方は大丈夫」という判断をしないのが標準予防策です。 診断がついていない感染症があり得るからです。 訪問カバンの中身と置き方 カバンは床に直接置かない … 新聞紙やビニールシートを敷く。 これを毎回やる 清潔・不潔をカバンの中で分ける … 使用済みを入れる袋を必ず別に 手指消毒剤はカバンの外ポケットに … 中を開けてから探すのでは遅い ディスポ手袋は多めに … 足りなくなって使い回すのがいちばん危険 使用済みの物品は密閉して持ち出す … 利用者宅のゴミに混ぜてよいかは事前に確認 1番を軽く見ないでください。 カバンの底は、次の家の食卓の横に置かれます。 手指衛生のタイミング 手洗い場が使えるとは限らないので、 擦式アルコール製剤 が中心になります。 タイミング 方法 玄関に入る前 アルコール ケアの前 アルコール(可能なら流水) 手袋を外した直後 アルコール。 手袋をしていたから不要、ではありません 体液に触れた後 流水と石けん 。可能な限り 玄関を出た直後 アルコール。次の家に持ち出さない 「手袋を外した直後」が最も抜けます。 手袋には目に見えない穴があり、外す...

訪問看護記録の書き方|SOAPの型と、そのまま使えるNG例・OK例

訪問看護に移って最初につまずくのが 記録 です。病院と違い、その場に誰もいません。書いたものだけが残ります。 この記事では、 SOAPの型 を訪問看護の場面に落とし込み、 そのまま使えるNG例・OK例 で整理します。 記録は誰のために書くのか 読む人 その人が知りたいこと 次に訪問する看護師 前回どうだったか。何に注意して入るか 主治医 指示に対して何が起きているか ケアマネジャー 生活が回っているか。他サービスとの調整が要るか 実地指導・監査 指示書・計画書と実施内容が整合しているか ご家族・ご本人 開示を求められる場合があります 最後の行を意識してください。 記録は開示の対象になり得ます。憶測や感情的な表現を書かないのは、そのためです。 SOAPの型を訪問看護に落とすと 書くこと 訪問看護での例 S (主観) 本人・家族が言ったこと をそのまま 「夜中に2回起きてトイレに行った」 O (客観) 観察・測定した 事実 体温36.8℃、下腿に圧痕性浮腫あり、歩行時にふらつき A (評価) SとOから 何が起きていると考えるか 利尿薬の効きと水分摂取のバランスが崩れている可能性 P (計画) 次に誰が何をするか 主治医へ報告、明日の訪問で体重測定、家族へ飲水量の記録を依頼 いちばん抜けるのはAです。 SとOだけ書いて終わると、読んだ人が同じ判断を一からやり直すことになります。 NG例とOK例 ①「特変なし」で終わる NG OK 特変なし。清拭施行。 S「調子はいつも通り」 O 体温36.5℃、血圧128/76、SpO2 97%、食事摂取量は8割。仙骨部の発赤なし。 A 前回の発赤は消退。 体位変換の間隔は現状で維持可 P 次回も仙骨部を確認。家族へクッションの位置を再説明済み 「特変なし」は、見ていないのか、見て問題なかったのかが区別できません。 何を見て問題なしと判断したかを書いてください。 ② 憶測を書いてしまう NG OK 家族が介護に非協力的で、本人が放置されている様子。 O 前回の訪問時に依頼した水分記録は未記入。居室のペットボトル2本が未開栓。 S 長男「日中は仕事でほとんど家にいない」 A 日中の見守りが手薄 。水分摂取量の把握が困難 P ケアマネへ情報提供。日中のサービス追加を検討...

訪問看護のご家族対応でこじれないために|場面別のNG例・OK例と、持ち帰った後の5手順

訪問看護でつらいのは、医療的な難しさよりも ご家族との関係がこじれたとき だと感じています。 そして、こじれる原因の多くは技術ではなく 初動の一言 です。この記事では、よくある場面ごとに 何を言い、何を言わないか を具体的にまとめます。 まず押さえる原則 やること 理由 最後まで遮らずに聞く 途中で説明を始めると「聞いてもらえていない」に変わる 事実と評価を分けて聞き取る 「何があったか」と「どう感じたか」は別。両方必要 その場で結論を出さない 確認しないまま答えると、後で覆すことになる 当日中に事業所へ共有する ここが最重要。 1人で抱えた時点で必ず悪化します 訪問看護は「その場に1人」です。 だからこそ、持ち帰って共有する仕組みがないと、担当者が潰れます。 言ってはいけない4つ 「私は聞いていません」 … 事業所として受けている以上、担当者が知らないことは理由になりません 「前の担当者が…」 … 内部の問題を外に出すと、事業所全体の信頼が落ちます 「それは決まりですので」 … 制度の説明は必要ですが、これを最初に言うと会話が終わります 「大丈夫ですよ」(根拠なく) … 確認していないことを断定しない。後で覆ると一気に不信になります 4つ目が最も多い失敗です。 その場を収めたい気持ちから出てしまうのですが、結果的にいちばん深い溝を作ります。 場面別の対応 ①「約束の時間に来ない」 訪問看護で最も多い苦情です。前の訪問が延びた、道路が混んだ——理由は正当でも、待つ側にとっては関係ありません。 NG OK 「前の方が長引いてしまって」 「お待たせして申し訳ありません。 15分遅れます と、遅れが分かった時点でご連絡すべきでした」 謝るのは「遅れたこと」ではなく「連絡しなかったこと」です。 遅れは起きます。連絡は防げます。ここを言い分けると、相手の受け取り方が変わります。 ②「言ったことが伝わっていない」 担当者が複数いる事業所で必ず起きます。 NG OK 「聞いていませんでした」 「申し訳ありません。 事業所内で共有できていませんでした。 もう一度お聞かせいただけますか」 そのうえで、 次から誰が来ても同じ対応になるように記録に残す ところまでを、その場で伝えてください。「記録に残して...

訪問看護のBCPは何をそろえる?未策定減算の要件と、優先順位名簿の作り方

BCPは「作って終わり」の書類だと思われがちです。ですが、 2025年4月からは未策定が減算に直結します 。 訪問看護は、災害時も感染症流行時も 止められないサービス です。この記事では、 最低限そろえるもの と、 訪問看護ならではの詰まりどころ を整理します。 いつから何が義務なのか 介護サービス事業者のBCP(業務継続計画)は 令和6年(2024年)4月1日から義務 です。3年間の経過措置が終わっての完全義務化でした。 そのうえで、 業務継続計画未策定減算 が設けられています。訪問系サービスは 令和7年(2025年)3月31日まで適用しない という経過措置があり、 2025年4月から適用 されています。 内容 義務の中身 ①BCPの策定 ②定期的な研修・訓練 ③定期的な見直し 減算の要件 BCPを策定し、計画に従い必要な措置を講じていること。 感染症・災害のいずれか又は両方が未策定 だと減算対象 減算率 訪問系は 所定単位数の1% (サービス種別で異なります。最新の告示でご確認ください) 注意したいのは、研修・訓練の実施そのものは減算の要件ではないという点です。 減算になるのは「計画がない」場合。ただし研修・訓練は運営基準上の義務なので、やらなくていいわけではありません。 運営指導で見られるのはこちらです。 2種類そろえる必要があります BCPは 感染症編 と 自然災害編 の2つが必要です。どちらか1つでは足りません。 感染症編 自然災害編 想定する事態 職員・利用者の感染、濃厚接触による欠勤 地震・水害・停電・断水 止まる原因 人が足りなくなる 移動できなくなる・物が届かない 訪問看護の急所 誰が濃厚接触かで訪問可否が変わる 訪問ルートが分断される 備えの中心 ゾーニング・防護具の備蓄・応援体制 安否確認・優先順位・移動手段 同じ「事業が止まる」でも、止まり方が違います。 だから2つ必要なのだと考えると腹落ちします。 訪問看護でいちばん重要なのは「優先順位」 施設と違い、訪問看護は スタッフが足りなければ全員には行けません 。誰に必ず行くのかを、事前に決めておく必要があります。 優先度が高くなるのは、次のような方です。 人工呼吸器・在宅酸素を使用している … 停電が直接、命に関わる 中心静脈栄養・経...