訪問看護でつらいのは、医療的な難しさよりもご家族との関係がこじれたときだと感じています。
そして、こじれる原因の多くは技術ではなく初動の一言です。この記事では、よくある場面ごとに何を言い、何を言わないかを具体的にまとめます。
まず押さえる原則
| やること | 理由 |
|---|---|
| 最後まで遮らずに聞く | 途中で説明を始めると「聞いてもらえていない」に変わる |
| 事実と評価を分けて聞き取る | 「何があったか」と「どう感じたか」は別。両方必要 |
| その場で結論を出さない | 確認しないまま答えると、後で覆すことになる |
| 当日中に事業所へ共有する | ここが最重要。1人で抱えた時点で必ず悪化します |
訪問看護は「その場に1人」です。だからこそ、持ち帰って共有する仕組みがないと、担当者が潰れます。
言ってはいけない4つ
- 「私は聞いていません」 … 事業所として受けている以上、担当者が知らないことは理由になりません
- 「前の担当者が…」 … 内部の問題を外に出すと、事業所全体の信頼が落ちます
- 「それは決まりですので」 … 制度の説明は必要ですが、これを最初に言うと会話が終わります
- 「大丈夫ですよ」(根拠なく) … 確認していないことを断定しない。後で覆ると一気に不信になります
4つ目が最も多い失敗です。その場を収めたい気持ちから出てしまうのですが、結果的にいちばん深い溝を作ります。
場面別の対応
①「約束の時間に来ない」
訪問看護で最も多い苦情です。前の訪問が延びた、道路が混んだ——理由は正当でも、待つ側にとっては関係ありません。
| NG | OK |
|---|---|
| 「前の方が長引いてしまって」 | 「お待たせして申し訳ありません。15分遅れますと、遅れが分かった時点でご連絡すべきでした」 |
謝るのは「遅れたこと」ではなく「連絡しなかったこと」です。遅れは起きます。連絡は防げます。ここを言い分けると、相手の受け取り方が変わります。
②「言ったことが伝わっていない」
担当者が複数いる事業所で必ず起きます。
| NG | OK |
|---|---|
| 「聞いていませんでした」 | 「申し訳ありません。事業所内で共有できていませんでした。もう一度お聞かせいただけますか」 |
そのうえで、次から誰が来ても同じ対応になるように記録に残すところまでを、その場で伝えてください。「記録に残しておきます」の一言があるかどうかで、印象がかなり違います。
③「もっとやってほしい」(契約外の依頼)
ご家族の負担が限界に近いときに出てくる言葉です。断り方を間違えると、関係が切れます。
| NG | OK |
|---|---|
| 「それは介護保険では」 | 「お困りなのはよく分かりました。ここは訪問看護では対応できない部分なので、ケアマネジャーさんと相談して、別の形で入れないか一緒に考えます」 |
断るときは、必ず次の窓口とセットにしてください。「できません」で終わると、見放されたと受け取られます。
④「前の看護師さんのほうがよかった」
言われると効きます。ですが、多くの場合は比較そのものが目的ではありません。「変わることが不安」という気持ちの表れです。
| NG | OK |
|---|---|
| 「人によってやり方が違いますので」 | 「これまでのやり方で、続けたほうがいいところを教えていただけますか」 |
比較を否定せず、情報として受け取るのがコツです。実際、前任者のやり方に理由があることは多いです。
⑤ 医療的な判断への不満
「入院させてほしい」「この処置は違うのではないか」といった声です。
ここはその場で判断しないでください。「主治医に確認します」で持ち帰るのが正解です。ただし、いつ連絡するかを明示すること。「後ほど」では不安が残ります。
持ち帰った後にやること
- 当日中に管理者へ報告 … 翌日ではなく当日。事実だけを、時系列で
- 記録に残す … 言われた言葉をそのまま。要約すると意図が変わります
- 誰が返答するか決める … 担当者か管理者か。ここを決めないと二重連絡になります
- ケアマネジャーへ共有する … 他のサービスでも同じことが起きている可能性があります
- 返答期限を守る … 「明日ご連絡します」と言ったら、内容が決まらなくても明日連絡する
5つ目を軽く見ないでください。「結論が出ていないから連絡できない」が、いちばん不信を招きます。「まだ確認中です」でも連絡する。それだけで印象が変わります。
担当を代えるという選択
相性が合わないことはあります。担当変更は逃げではありません。
ただし、変えるときは事業所の判断として伝えてください。「私では力になれないので」と担当者が言うと、責任を1人が背負う形になります。「体制を見直しました」で十分です。
そして、変更後に元の担当者を責めない運用にしてください。ここが崩れると、次から誰も報告しなくなります。
よくある質問
Q. 明らかに理不尽な要求のときは
それでも初動は同じです。まず聞く、その場で結論を出さない、当日中に共有する。そのうえで、事業所として対応の線を決めてください。個人で線を引かないことが重要です。
Q. 記録にはどこまで書きますか
言われた言葉をそのまま書いてください。「ご家族が不満を訴えられた」ではなく、実際の発言を。後から経緯をたどるときに、要約された記録は役に立ちません。
Q. 訪問が怖くなってしまいました
1人で行かない選択があります。同行訪問に切り替えることを管理者に相談してください。それを言い出せる事業所かどうかが、働きやすさの分かれ目です。
まとめ
- 原則は最後まで聞く・その場で結論を出さない・当日中に共有する
- 言ってはいけないのは「聞いていません」「前の担当者が」「決まりですので」「根拠のない大丈夫」
- 遅刻は遅れたことではなく連絡しなかったことを謝る
- 断るときは次の窓口とセットにする
- 「明日連絡します」と言ったら、結論が出ていなくても連絡する
- 担当変更は事業所の判断として伝える
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ご家族対応がつらくなるいちばんの原因は、1人で抱える構造です。持ち帰ったことを事業所が受け止める仕組みがあるかどうかで、同じ出来事でも負担がまったく違います。求人票には出てこない部分ですが、「利用者さんとトラブルになったとき、誰がどう対応していますか」を面談で聞くと、その事業所の姿勢がよく見えます。転職サイトの担当者は事業所ごとの内情を持っているので、確認を頼んでみてください。
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