「これ、先生に電話したほうがいいのかな」
訪問先の玄関を出たところで、そう迷って立ち止まったことが何度もあります。
結局その日は電話せず、夜になって気になって眠れませんでした。
訪問看護でいちばん神経を使うのは、処置そのものではないと思っています。
主治医に「いつ、何を、どう伝えるか」のほうが、ずっと難しい。
病院なら廊下で捕まえて聞けたことが、在宅では電話一本の判断になります。
今回は、報告していい基準と、短く伝わる言い方を整理します。
迷う理由は「忙しい先生に悪い」だけではない
報告をためらう理由を分けると、だいたい3つでした。
- この程度で連絡していいのか分からない
- 何をどう言えば伝わるか自信がない
- 前に電話したとき、そっけない反応だった
3つ目が、いちばん尾を引きます。
ただ、あとから振り返ると、そっけなかったのは結論が最後まで出てこない伝え方だったから、ということが多かったです。伝え方が変わると、反応も変わりました。
「すぐ連絡する」の線引き
迷ったら連絡、が大前提です。そのうえで、置いておくと楽になる線を書きます。
| 場面 | 目安 |
|---|---|
| その場で電話 | 意識・呼吸・循環の変化、いつもと明らかに違う痛み、出血、転倒して打ちどころが不明、指示された範囲を超える処置が必要 |
| その日のうちに連絡 | 発熱が続く、食事量・水分量が数日落ちている、褥瘡が広がってきた、内服が飲めていない |
| 次の報告書でよい | 経過が安定している、ご本人の希望や生活面の変化、ご家族の負担の様子 |
この3段に振り分けるだけで、玄関先で立ち止まる時間はかなり減りました。
迷う一件は、たいてい真ん中の段にあります。真ん中は、その日のうちにファクスや連絡ノートで文字にして送る。それで十分なことが多いです。
30秒で伝わる型
電話の最初の一言を決めておくと、頭が真っ白になりません。
- 名乗りと相手の確認…「○○訪問看護ステーションの△△です。□□さんの件でご報告です」
- 結論を先に…「発熱が3日続いていて、受診の判断をお願いしたいです」
- いま見えていること…体温、食事量、いつからか。数字を入れる
- 背景をひとこと…前回訪問時との違い、内服の状況
- こちらの見立てと依頼…「誤嚥性のものを疑っています。往診か受診指示をいただけますか」
肝は②で結論を出すことです。経過から話し始めると、聞いている側は「で、何をしてほしいの」が分からないまま待つことになります。
私は電話の前に、この5つを付箋に書いてから受話器を取るようにしました。慣れると書かなくても言えるようになります。
言いにくいけれど、いちばん大事なこと
「こちらの見立て」を言うのをためらう方は多いと思います。診断は医師の仕事だから、という気持ちも分かります。
ただ、毎日その方の家に入っているのは看護師のほうです。いつもと違うという感覚は、いちばん確かな情報だと思っています。
言い方を少し変えるだけで、越権にはなりません。
- 「〜だと思います」→ 「〜のように見えます」
- 「〜してください」→ 「〜のご指示をいただけますか」
事実を渡して、判断は医師に返す。この形なら、遠慮なく伝えられます。
電話がつながらないときの順番
外来中や手術中で、すぐには出られないこともあります。
私は次の順で動くようにしていました。
- クリニックの事務の方に、用件と緊急度と折り返し先を預ける
- 同時に、要点をファクスかメールで文字にして送る
- その間にできる観察を続け、時間を迴って記録する
- 待てない状態なら、あらかじめ決めてある救急の手順に切り替える
「連絡がつかないまま様子を見た」がいちばん危ないので、待つ時間の上限をステーションで決めておくと安心です。
報告書は「次に何をするか」で終える
定期の報告書も、同じ考え方でいいと思います。
経過を並べて終わるのではなく、最後の一行にこちらが次にすること、医師に判断してほしいことを書く。
たとえば「浮腫が続いており、体重測定を週2回に増やします。利尿薬の調整が必要かご検討ください」。この一行があるだけで、返事が返ってくる確率が上がりました。
ご家族の話と、医師が聞いている話がずれているとき
在宅でよくあるのが、受診のときにご家族が「変わりありません」と答えてしまっているパターンです。
悪気はありません。診察室では緊張されますし、毎日のことは言葉になりにくいものです。
だから、看護師が見ている生活の様子は、こちらから届けないと医師には届きません。
- 受診の前日に、その週の様子を3行にまとめて連絡ノートやファクスで送る
- ご家族には、聞いてほしいことを1つだけ決めて渡す
- 受診後は、何がどう変わったかをご家族から確認して記録に残す
とくに2つ目です。あれもこれもとお願いすると、結局どれも聞けずに帰ってこられます。1つに絞ると、ちゃんと持ち帰ってくださいます。
その場のメモが、あとの報告を楽にする
報告が苦しくなるのは、思い出しながら話しているときです。
訪問中に、次の3つだけメモしておくと、電話も報告書も一気に楽になります。
- 数字…体温、血圧、食べた量、いつから何日目か
- ご本人の言葉…「起きるとふらつく」など、そのままの言い方で
- 前回との違い…一行でいい。「前回は自分で座れた」
この3つがあると、医師に伝えるときの事実の部分がそのまま使えます。
今日のまとめ
- 報告はその場で電話/その日のうちに/次の報告書の3段に振り分ける
- 電話は結論を先に。名乗り→依頼→事実→背景→見立ての順
- 見立ては「〜のように見えます」で渡す。判断は医師に返す
- つながらないときは待つ時間の上限を決めておく
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主治医との連絡の型がステーションとして汶まっているか。ここは働きやすさに直結すると思っています。
連絡の基準が個人任せになっている職場では、迷いも責任も看護師ひとりにかかります。管理者がどこまで一緒に判断してくれるかは求人票では分からないので、間に人が入る形で聞いてもらうのも一つの手かもしれません。
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