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訪問看護ステーションの開業要件|常勤換算2.5の作り方と、指定申請までの逆算スケジュール

訪問看護ステーションを立ち上げたい。そう考えたときに最初にぶつかるのが、「結局、何がそろえば指定を受けられるのか」という問いです。

調べると人員基準・設備基準・運営基準という言葉が並びますが、実務で本当に効いてくるのは限られています。この記事では、開設までに必ずクリアしなければならない要件を、つまずきやすい順に整理します。

大前提:法人でなければ指定を受けられない

個人事業では訪問看護ステーションの指定は受けられません。株式会社・合同会社・一般社団法人・医療法人・NPO法人など、法人格が必要です。

そして見落としやすいのが定款の事業目的です。目的に「訪問看護事業」に相当する記載がないと、指定申請の段階で差し戻されます。既存の法人で始める場合は、定款変更に要する時間を先に見込んでおいてください。ここで1か月ずれる例は珍しくありません。

人員基準:常勤換算2.5以上、うち1人は常勤

最大の関門がここです。

職種基準
看護職員
(保健師・看護師・准看護師)
常勤換算で2.5人以上
うち1人以上は常勤
管理者常勤専従。原則として保健師または看護師
(適切な訪問看護に必要な知識・技能を有すること)
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士実情に応じた適当数(配置しなくてもよい

常勤換算の計算はシンプルです。 常勤職員の週の勤務時間が40時間なら、週20時間の非常勤は0.5人。全員の勤務時間を合計して40で割った数が常勤換算数になります。

つまり常勤1人+週30時間1人+週30時間1人=2.5 という組み方でも要件は満たせます。フルタイム3人を最初から集める必要はありません。ここを誤解して「常勤3人そろうまで動けない」と止まってしまう方がとても多いところです。

もう一つの注意点として、管理者は常勤で、原則として管理業務に専従です。「自分が管理者をやりながらガンガン訪問に出る」という前提で計算していると、人員が足りなくなります。管理者の訪問がどこまで認められるかは自治体で解釈に幅があるため、必ず所管の窓口に事前確認してください。

設備基準:事務所は「専用」であること

意外につまずくのがこちらです。

  • 事業の運営に必要な広さの専用事務室 … 他の事業と間仕切りなく共用している状態はNGになりやすい
  • 相談スペース … 利用者・家族と話せる、個人情報が漏れない区画
  • 手指を洗浄する設備
  • 固定電話(FAXも実務上ほぼ必須。指示書のやり取りに使います)
  • 鍵のかかる書庫、パソコンのセキュリティ対策などの個人情報保護設備

自宅の一室で始めたい、という相談は多いのですが、生活空間と分離できているかが論点になります。図面と写真で説明できる状態にしてから相談に行くと、話が早く進みます。

運営基準:開設前に用意しておく書類

運営基準は条文で読むと膨大ですが、開設時に手を動かすのは実質この5つです。

  1. 運営規程 … 事業の目的、職員体制、営業日時、提供地域、料金、緊急時の対応など
  2. 重要事項説明書・契約書 … 運営規程と数字が食い違わないように作る
  3. 各種マニュアル … 感染症、緊急時、事故発生時、虐待防止、身体拘束
  4. 業務継続計画(BCP) … 感染症と自然災害の両方
  5. 個人情報同意書、記録様式一式

記録の保存期間は2年間とされています(自治体によりさらに長い保存を求める場合があります)。また主治医の指示は文書で受けること、同居家族へのサービス提供は禁止されていることは、開設後に事故になりやすい2点です。

指定申請のスケジュール感

指定は多くの自治体で毎月1日付、申請はその前月の中旬までが締切という運用が一般的です。ただし締切日も必要書類も自治体ごとに異なります。ここは必ず所管の窓口で確認してください。

逆算すると、こういう順序になります。

4〜6か月前法人設立または定款変更、事業計画と資金計画
3か月前物件の確保、所管窓口へ事前相談(図面を持参)
2〜3か月前人員の確保。ここが最も時間がかかる
1〜2か月前規程・マニュアル整備、申請書類の作成と提出
開設月指定日以降にサービス開始。営業活動を並行

人員の確保が全体の律速です。 内定を出しても入職は1〜3か月先になるため、物件より先に人の目処を立てるほうが結果的に早く進みます。

開設後に効いてくること

基準を満たすことと、事業として回ることは別です。開設直後にいちばん響くのは依頼が来るかどうかで、これは制度ではなく営業の話になります。

ケアマネジャーからの依頼が入り始めるまでには時間がかかります。運転資金は、報酬の入金サイクル(サービス提供月の約2か月後)を前提に組んでください。 4月に開設したら、まとまった入金は6月です。ここを甘く見た資金計画が、いちばん危ない失敗の形です。

よくある質問

Q. 看護師の資格がなくても開設できますか
経営者本人が看護師である必要はありません。ただし管理者は原則として保健師または看護師なので、その人を確保できるかが前提になります。

Q. リハビリ職中心の体制にできますか
理学療法士等の訪問はあくまで看護業務の一環という位置づけで、看護職員の常勤換算2.5以上は別に満たす必要があります。 リハビリ職に偏った体制は指導の対象になり得ます。

Q. 医療保険と介護保険、どちらの届出が必要ですか
実務上は両方を扱うことになります。介護保険の指定を受けると健康保険法の指定訪問看護事業者としてみなされる扱いがありますが、手続きの詳細は自治体・地方厚生局で確認してください。

まとめ

  • 法人格が必須。定款の事業目的を先に確認する
  • 看護職員は常勤換算2.5以上・うち1人は常勤。フルタイム3人は不要
  • 管理者は常勤で、原則として保健師か看護師
  • 事務室は専用であること。相談スペースと鍵付き書庫も要る
  • いちばん時間がかかるのは人員確保。物件より先に動く
  • 入金は約2か月後。運転資金はそこを前提に

※基準の細部と申請書類は自治体で運用が異なります。この記事は全体像の整理として使い、最終確認は必ず所管の指定権者へお願いします。

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